失火責任法について具体事例を交えて解説|ダイレクト火災保険iehoいえほ

失火責任法について具体事例を交えて解説

失火責任法は、火災が発生し周辺に損害を与えた際の、出火元の損害賠償責任について定めた法律です。明治32年に制定され、「失火(不注意の過失による火災)の場合、重大な過失のあるケースを除き、損害賠償はしなくて良い。」といった内容が定められています。
ご自身がもらい火を受けてしまった場合も、ご自身が出火元となり近隣に損害を与えてしまった場合も、いずれも関連してくる重要な法律です。この記事では、失火責任法の内容や、過去の適用事例、留意点について詳しく解説していきます。

目次

失火責任法とは?

失火法、失火責任法と呼ばれることが多いですが、正式名称を「失火ノ責任ニ関スル法律」と言います。この法律では、重大な過失がなければ、出火元は損害賠償の責任を負わないと定められています。では、重大な過失とはどのようなものでしょうか。続けてもう少し詳しく解説していきます。

重大な過失

失火法における「重大な過失(重過失)」とは、過去の判例では「通常要求される相当の注意をせずとも、わずかの注意で損害をたやすく予見できたにも関わらず漫然と見逃すような、ほとんど故意に近い顕著な注意欠如の状態」とされています。

ご自身が出火元になってしまった場合、この重過失に該当しなければ損害賠償義務を負わずに済みますが、逆にご自身が失火による類焼を受けた場合、重過失に該当すると判断されなければ、損害を賠償してもらえないことになります。

重大な過失に該当する例、該当しない例にどんなものがあるか、参考にいくつか見ていきましょう。

重大な過失の事例

  • ガスコンロの脇にインスタントラーメンの袋を置き、ガスコンロの火を消さずに放置したまま目を離したことにより火災を発生させた事例
  • ガソリンが入った瓶を、栓をしないまま燃焼中の石油ストーブ近くの足元に置いていたため、瓶が倒れてガソリンがストーブに引火し、火災を発生させた事例
  • 密閉状態に近い屋内で、点火中のストーブに近接して引火性の強い接着剤を使用した結果、火災を発生させた事例

いずれも故意ではないものの、そのままでは火災が起きることが簡単に想像できるケースであるにもかかわらず火災を発生させた事例であり、重大な過失であると判断されています。

過失だが重大な過失でない事例

  • 飲酒した状態でガステーブルにアルミ製鍋をかけ、点火した状態で寝入ったため、アルミ製鍋が溶けて変形するほどに加熱され、ガステーブル周辺の可燃物に引火し出火、火災が発生した事例
  • 仏壇の前の燭台にロウソクをたてて点火し、そのまま外出したところ仏壇付近から出火、火災が発生した事例
  • 庭で枯葉等を燃やして消火した後、一度消えた火が再燃して出火、火災が発生した事例

いずれも過失ではあるものの、重大な過失ではないと判断された事例です。ただ、ガスコンロ付近に物を放置するなど、重大な過失と認められたものと似た性質の事例もありました。実際は個々の事案ごとに経緯を踏まえた判断となるため、予め明確な線引きが存在するわけではないということが分かります。

重過失以外で賠償責任を負うケース

失火責任法で損害賠償義務を免れるのは、民法第709条の「不法行為(故意または過失により他人の権利や法律上保護される利益を違法に侵害した場合)」による賠償責任のみです。民法第415条のに定める「債務不履行(契約等で他人に債務を負っている人が、その債務を果たさず相手方へ損害を与えた場合)」による賠償責任は免れることができません。

具体例としては、賃貸物件の入居者は物件の所有者に対し「原状回復義務」を負っています。部屋で火災を起こし、この「原状回復義務」を果たせなかった場合は債務不履行による賠償責任が発生しますが、これは失火責任法で免れることのできないものになります。そのため、賃貸用火災保険には、物件所有者に対する「借家人賠償責任」の補償をセットすることが通例となります。

ジェイアイ傷害火災保険の「iehoいえほ」は、賃貸住宅にお住まいの方はお申込みいただけません。

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ご自身がどんなに気を付けていても、もらい火により住宅が被害を受ける可能性があります。その時、出火元に重大な過失が認められなければ、相手方へ損害賠償を求めることができず、ご自身の損害はご自身で加入している火災保険の補償で賄うしかありません。

またご自身が万一出火元になってしまった場合、失火責任法があると言っても、人間関係を考えると知らんぷりするのも難しいものです。そのため火災保険には、出火元として近隣に損害を与えてしまった場合の道義的な対応として支払う見舞金の費用をカバーする「失火見舞費用保険金」という補償が存在します。

他にも、ご自宅に比較的高額な家財があり、盗難リスクが心配な方も、家財の補償を受けられるようにしておきましょう。盗難の補償をセットすることで、万が一高額な家財が盗難にあっても保険金を受け取ることができます(「高額貴金属等」の家財の損害には、別途損害の限度額が設定されている場合があります)。火災保険は、火災が起こった際の損害保険金だけでなく、自動車の飛び込みなど「物体飛来の補償」や床上浸水などの「水災の補償」も受けられます。

ダイレクト火災保険「iehoいえほ」は、この「失火見舞費用保険金」がすべての契約に自動でセットされています。ご自身がもらい火を受けてしまった場合、失火してしまった場合の両方に備えて、火災保険には必ず加入しておきましょう。

さらに、大きな地震が心配な方には、火災保険と合わせて地震保険に加入することをおすすめします。地震による損害は、火災保険のみでは補償されません。いつどこで起こるか分からないからこそ、いつでも起こる可能性があると考えて対策をしておきましょう。

何らかの災害の被害に遭う可能性は誰しも持っていますが、災害が発生する時期や被害の大きさを完璧に予想することはできません。急に被害を受けて、困ってしまうケースがほとんどでしょう。災害が起こった時に被害を受けるのは、建物だけではありません。消火のための水によって電化製品が壊れる、炎や煙の影響で衣類が全て着られなくなるといったことが考えられるのです。家具や家電などを全て買い換えるには、莫大な費用がかかります。建物が壊れた場合は、プラスで引越し費用などもかかってくるでしょう。もしもの時に備えて、家財補償を付けることを検討してみてはいかがでしょうか?

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まとめ

失火責任法では、重過失と認められない限り出火元に損害賠償責任が発生しないと定めています。ただし、重過失に該当するかどうかを定める明確な線引きは存在しません。

もらい火による損害を請求できない場合、また、ご自身が出火元になってしまった場合の道義的な対応に備える観点からも、火災保険に加入し、経済的損失に備えておく必要があります。

失火責任法について、正しく理解したうえで、加入する火災保険を選び、また現在加入している火災保険に必要な補償がセットされているか一度ご確認されると良いでしょう。